街に出て、課題の種を拾え。
― 研修アプリ「課題ハント」ができるまで【企画者インタビュー】
9月12日、全社研修「ITロゲイニング」が開催されました。
ロゲイニングとは、地図を手に制限時間内にチェックポイントを巡り、得点を競い合う野外アクティビティです。今回の研修ではチェックポイントの代わりに「お題カード」を用意。社員約60名が5人ずつ12チームに分かれ、東京23区の商店街へと繰り出しました。
探すのは、「ITでもっと便利にできそうな場所」と「すでにテクノロジーが活きている素敵な工夫」。カードの配布から写真付きの回答提出、リアルタイムの採点まで、すべて社内開発したオリジナル研修アプリ「課題ハント」で行いました。
最初の「キャンプ場でBBQをしよう!」という構想から、なぜ商店街を巡る本格的なITフィールドワークへと進化したのか? 運営メンバーとしてアプリ開発を手がけたファンが聞き手となり、企画を立ち上げた渡部に開発と当日の舞台裏を聞きました。
企画者
- 渡部 /研修企画担当
- ファン /運営・アプリ開発担当(聞き手)
研修概要:全社研修「ITロゲイニング」
- 日程:2026年9月12日
- 参加者:社員約60名(5人ずつ12チーム)
- ルール:スマホの使用はOK。ただし「生成AIに答えを丸投げすること」は禁止!
- 舞台:芝公園(東京都港区)に集合後、チームごとに23区内の別々の商店街へ出発
- カード:1チーム10枚(不便ハント4枚・技術クイズ3枚・アイデアミッション3枚、合計260点)。最も配点が高いのは、具体的な解決策までチームで考える「アイデアミッション」
- 準備:候補の商店街を運営メンバーで手分けして下見(ロケハン)。17エリア・178枚のお題を現地で足を使って検証し、確度の高い厳選ミッションを設計
- アプリ:研修アプリ「課題ハント」を社内で独自開発。カード配布、写真提出、採点までをワンストップで実現
最初は、「キャンプ場で美味しいお肉を焼く」はずだった
ファン 「課題ハント」、当日は大盛り上がりでしたね! でもこの企画、最初はまったく違うアイデアからスタートしたんですよね?
渡部 そうなんです(笑)。もともとは「みんなでキャンプ場に行って、美味しいBBQをしよう!」という素朴なアイデアから始まりました。ただ、せっかく全社で集まるなら、ただ楽しむだけでなく「エンジニアとして持ち帰れる確かな手応え」も作りたいなと。
私たちが普段携わっているSESや受託開発の現場では、お客様からいただいたご要望をカタチにする高い技術力が求められます。でもこれからのエンジニアにはもう一歩踏み込んで、「ここをもっと良くできるんじゃないか」「こんな技術を使えばもっと喜ばれるはず」と、日常の中から自ら課題を見つけて提案する力も育てていきたい。そう思ったんです。
ファン 「自ら課題を発見するアンテナ」を磨く研修にしたかったわけですね。
渡部 そうです。初期案では「社内の困りごとをヒアリングして、解決アイデアをプレゼン。良い提案が通ったら豪華なBBQ食材がもらえる!」というルールを考えていました。ただ、それだと審査の主観が強くなっちゃうし、みんなの意識がお肉に引っ張られすぎるなと(笑)。
「課題を見つける面白さ」をもっと純粋にゲーム感覚で体験できないか……と悩んでいたときに出会ったのが、地図とチェックポイントを巡る「ロゲイニング」でした。「街を歩きながら課題の種をハントしていくゲームにしたら、絶対にワクワクする!」と直感したんです。
ファン 秋の研修は「座学ではなく、身体を動かすアクティブなものにしたい」というリクエストもありましたし、まさにピッタリの組み合わせでしたね。
「スマホ禁止」をやめて、「AIに丸投げすること」を禁止にした理由
ファン キャンプ場案のときは「検索やAIに頼らず頭を使ってほしいから、スマホ禁止にしよう」という話もありましたよね。そこからどうして方針を変えたんですか?
渡部 いざ街に出るとなると、スマホなしではそもそも迷子になっちゃいますからね(笑)。
それに、約60名・12チームが23区中に散らばるなかで、紙のカードを手渡しで配るのは物理的に不可能です。運営が駆け回るわけにもいかないですし。それなら専用のWebアプリを作って、スマホ上でカードを配り、写真とテキストでリアルタイムに回答してもらう形が一番スマートだと考えました。
ファン そこで私の出番となり、アプリ「課題ハント」の開発がスタートしたわけですね。
渡部 はい。「道具としてのスマホ」は思い切り活用しよう、と。その代わり、答えをそのままAIに尋ねて終わらせるのではなく、「自分たちの目で見つけ、自分たちの頭でアイデアを出す」ことを大切にしたかったので、「生成AIで回答を作ることだけを禁止」という絶妙なルールに落ち着きました。
当日の予期せぬトラブルや状況変化に備え、各種機能を即座に調整できる前提で構築していますが。
なぜ23区の「商店街」だったのか?
ファン 舞台も、最初は本社がある浜松町周辺を想定していましたよね。
渡部 最初は近場で手軽に……と考えていたんですが、全チームが同じオフィス街を歩くと、見つかる課題も似通ってしまいます。せっかくならチームごとに全然違う街の空気に触れてほしくて、東京23区の「商店街」に舞台を広げました。
イベントの時間になると、現在地に応じたお題カードが届きます。
リーダーなら少し仕様が変わります。
ファン 商店街というテーマには、私自身もすごく共感できます。私は台湾出身なので、台湾の夜市や街並みと同じように、日本の独自の温かい文化や暮らしが商店街からみられるのはすごく楽しみでした。
大型商業施設やネット通販が普及する一方で、昔ながらの商店街には「ちょっとしたデジタル化やアイデアがあれば、もっと便利になって活気が戻るはず!」という可能性がたくさん眠っていますよね。ITの力で街の魅力をもっと引き出せないか、という挑戦の舞台として、商店街はまさに最高のフィールドでした。
渡部 そうですね。最新のITが整備された街よりも、人の温もりと工夫が混ざり合う商店街のほうが、「ここにこんな仕組みがあったら便利かも!」という発想がどんどん湧いてきますから。
街で見つけた課題やアイデアを、写真とテキストで投稿。クリアすると次のお題がアンロックされます。
投稿した内容はチーム内で共有されます。他のメンバーの投稿を見て、良いアイデアや発見には「いいね」を押してリアクションできます。
AIと「足」を掛け合わせた、本気のロケハン
ファン ただ、12エリア分のミッションを作るのは本当に骨が折れましたね(笑)。
渡部 大変でしたね! 候補地の洗い出しやお題の叩き台作りには生成AIの力も借りましたが、画面の前だけで完結させるわけにはいきません。事前に運営メンバーで手分けして、17か所の商店街を実際に歩き回る「ロケハン」を徹底しました。
課題ハントの原点として、提案者の渡部さんが各商店街の実地調査を目的に開発した「ロケナビ」。現地での調査活動にご協力くださった皆様、ありがとうございました!
ファン 実際に現地へ行ってみると、「AIが提案してくれたお店が移転していた」「現地で見ると別の魅力的なスポットがあった」といった発見がたくさんありましたね。
渡部 そうなんです。下見で確認した178枚のうち、4枚に1枚は現地に合わせて修正したり差し替えたりしました。リアルな現場に足を運んでこそ、良質なミッションになる。この下見のプロセス自体が、私たちにとっても「街の課題を見つける」良い実践になりました。
各チームのスタート地点からの距離差で不公平が出ないよう、ミッション上限を10枚に絞り、「駅前でまず解ける3枚」からスタートして段階的に商店街の奥へ誘導する導線設計など、ゲームバランスにもかなりこだわりました。
当日のハプニングと、思わぬ「街とのふれあい」
ファン 迎えた研修当日、現場ではどんなドラマがありましたか?
渡部 私のチームは柴又へ行ったんですが、まさに「現場のリアル」を思い知らされる出来事がありました。川の近くにある渡し船をテーマにしたミッションに向かったら、前日の雨の影響で増水していて運休だったんです!
「あれ、運休情報ってどこで分かるんだろう?」と河原の案内所で伺ったら、「実は告知は駅前の看板にしか出ていないんです」と教えてくださって。Webにリアルタイム情報が載っていない不便さを身をもって実感すると同時に、「駅と観光案内所と船乗り場をLINE botやデジタルサイネージで繋いだら、観光客の体験がもっと良くなるよね」と、チーム内で即座に熱いIT談義が始まりました。ハプニングがそのまま最高の教材になった瞬間でしたね。
ファン まさに現場に飛び込んだからこその気付きですね! 私のチームが担当した亀有でも、心温まるエピソードがありました。亀有といえば漫画『こち亀』の両さん像が街中にたくさんありますよね。
お題をクリアするためにみんなで像を探して写真を撮っていたら、地元の方が「何かのイベントかい? あっちの路地にも面白い像があるよ!」と笑顔で声をかけてくださったんです。
渡部 いいですね! 街の人との温かい交流が生まれていたんだ。
ファン はい。オフィスにこもっているだけでは味わえない、街の息づかいを感じられました。チームメンバーも普段の業務とは違う表情で、少年のように目を輝かせながら商店街を歩き回っていて、企画して本当によかったなと感じました。
課題ハントの仕組みは、もっと広く活用できる
ファン 当日を終えてみて、今後のアップデートに向けたアイデアもいろいろ湧いてきましたよね。
渡部 そうですね。現地のお店の定休日など、当日その場で起きる想定外の出来事にもっと柔軟に対応できるよう、「ミッションの選択式」を導入するなど、アプリの機能もまだまだ進化させられそうです。
ファン この「課題ハント」の仕組み自体、社内研修にとどまらず、いろんな可能性を秘めていると感じます。
渡部 本当にそう思います。今回は社内エンジニアの課題発見研修として実施しましたが、たとえば地方自治体や観光協会の方々とコラボレーションして、地域の魅力を再発見する街歩きイベントや、謎解き観光ラリーのような形にも展開できますよね。
ファン 一般のユーザーが休日に友達同士で街を巡りながら、お気に入りのスポットを写真とストーリーで残していくような、地域密着型のプラットフォームとしても面白そうです。
渡部 「街を歩き、魅力や課題を見つけ、テクノロジーで未来を考える」。このコアな体験さえあれば、商店街だけでなく学校教育や地域活性化など、活躍の場はいくらでも広げられる手応えを感じています。
小さな挑戦から、次は全社を巻き込む仕掛けへ
渡部 今回はまず形にすることを優先して、企画と初期開発を有志の少人数でスピード感重視で走らせました。手探りの部分も多かったですが、社員みんなが本気で街を駆け回り、熱気あふれる提案を次々とアップしてくれたのを見て、「この挑戦は大成功だった」と確信しています。
ファン 参加したメンバーからも「次はもっとこんなお題をやってみたい」「自分もアプリの追加機能を開発したい」という声がたくさん届いていますよね。
渡部 一度体験したことで、社員全員がこの研修の面白さと意義を共有できましたからね。次回の開催では、ミッション作りやアプリの機能拡張にさらに多くの仲間を巻き込んで、もっとダイナミックな仕掛けにスケールアップさせていきたいです。
街に出て、日常の風景から未来を変える種を見つける――このマインドを、これからの日々の開発やお客様への提案にも存分に活かしていきましょう!
「課題ハント」デモ版を公開しています
今回の研修のために開発した「課題ハント」のデモ版を、どなたでも触っていただけるように公開しています。カードが配られ、写真とコメントで答えていく流れを、ぜひ体験してみてください。
課題ハント デモ版はこちら!(スマホで確認可能)
【URL:https://kadai-hunt-demo.web.app/】





